Vol.43(17年2月)

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第43回は『夕愁』(せきしゅう)
日本画の作品です。

今から402年前、元和元年(1615年)4月
豊臣秀吉が建て、桃山時代の栄華の象徴だった「大坂城」は
灰燼と帰しました。
現在の大阪城の石垣や堀は徳川幕府の手によるもので、
大阪のシンボルの大阪城天守閣も昭和6年に再建されています。

織田信長の後を継ぎ、天下を統一した秀吉の城には
栄枯盛衰のドラマがあります。
落城直前の大坂城を題材に、秀吉が一代で築いた王朝の終焉を
絵にしてみました。

城は要塞ですから建物にかかわる当時の資料はほとんどありません。
それだけにいろいろと想像をめぐらすことができます。
この時代、大坂の街の西は海が近く水運も活発でした。
なにわの海の彼方、瀬戸内海に沈む陽は
一つの時代の消えゆくすがたです。
古に思いを馳せ、資料を探して創作することは、
未来を描くことのようにわくわくさせられます。

さて
平成25年8月から Monthly Hotline の仲間に入れていただき
趣味の絵画作品を載せていただいた
『無彰庵だより/UZLA』も最終回となりました。
今後は、はてなブログ「無彰庵だより」にて作品をご紹介してまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
http://busyoan-uzla.hatenablog.jp

無彰庵主 UZLA

 

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Vol.42(17年1月)

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第42回は『救衆』(くしゅ)
日本画の作品です。

奈良、薬師寺の東院堂にその「観音像」はあります。
薬師寺に行くと、金堂の薬師三尊像の迫力に
多くの参拝者は魅かれるかもしれません。
しかし東院堂に安置されている、白鳳時代を代表する「観音像」には
神秘さを感じます。

薬師寺聖観音菩薩立像」

はじめてこの「観音像」をじっくりと鑑賞したのは、
奈良国立博物館で開催された「大遣唐使展」で、
6年も前のことになります。
展示の方法が素晴らしく、「観音像」を身近に周囲から
観賞することができました。
信仰の対象である「観音像」を観賞とは、
バチが当たるかもしれません。
しかしこの企画展のおかげで、お堂の中で手を合わせるのとは異なる
「観音像」の神々しさを知ることができました。

さすがに「観音像」を絵画作品にすることは難しすぎますが、
仏画と異なる自分なりの作品づくりの参考にと考えての挑戦です。
手法は28回の『思惟』に、さらに下地に工夫をしてみました。

題名を『救衆(くしゅ)』としたのは、
「救世(くぜ)」= 観音菩薩のこと、世の衆生を救済する
の意味から、「救」と「衆」をいただきました。

本年が慈悲の力によって、人々が救われる年になりますように。

 

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Vol.41(16年12月)

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第41回は『優華』(ゆうばな)
日本画の作品です。

「トルコギキョウ」の花言葉は、
「優美」「すがすがしい美しさ」「希望」
「良い語らい」「思いやり」などだそうです。
たしかに花屋の店先で見られる可憐な花は、優しさを感じます。
茎から分かれた枝に多くの花をつけた状態は、
優しさに加えて華やかさを持っています。

原産国は北アメリカの米国のコロラド、テキサスやメキシコなどの
乾燥地帯とのこと。
本来は暖かい時季に咲く花ですが、品種の改良が進み
いつでも観賞することができます。
リンドウ科の植物で「トルコ」とも「キキョウ」とも関係ないようです。

ひとつひとつの花をしっかりと見つめていると、
自然界の持つ美しさは神秘的です。
透き通るような花の表情を出したくて、描いてみました。

 

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Vol.40(16年11月)

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第40回は『秋華』(あきばな)
水彩画の作品です。

奈良坂の道にそって建つ「般若寺」はコスモスの寺として有名です。
天平時代から平城京の鬼門を守る寺として栄えた寺も
治承4年(1180年)の平家の南都攻めの折に、
灰燼に帰したそうです。
鎌倉時代に再興された寺の、西門となる「楼門」は
国宝に指定されています。

楼門をくぐった先の境内に
一面に植えられたコスモスは美しく、
開花の時期には多くの観光客でにぎわいます。

秋桜」とも書くコスモスの花は、
深紅、淡紅、白と色は華やかですが、
細い線状の葉と、華奢に伸びた茎の先で風に揺れる花のすがたは
秋という季節だからか、少しもの悲しく感じられます。

古くからの歴史の中に佇むお寺の「楼門」を背景に、
華奢な花が咲き乱れる境内を描きました。

秋が深まってゆきます。

 

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Vol.39(16年10月)

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第39回は『均衡』(きんこう)
水彩画の作品です。

深い意味もなく、絵の中で緊張感を表現したいと思い
身近にありそうな材料で“バランス”をテーマに
絵を構成しました。

“転がる、落ちる”イメージのりんごを
アルミ製の尖った台の上に水平に乗せた板に置き、
板の片方は絵の外に・・・
この見えない部分で「均衡」が守られています。

りんごには、36回の『蓮華(はすばな)』に登場した
セグロイトトンボが縄張りを見張って止まっています。

さて、りんごに止まったイトトンボの重さがどれくらいか
想像がつきませんが、
このイトトンボの重さも「均衡」の要素のひとつとしたら、
時間が経過して、
不意に飛び立ったイトトンボのせいでりんごが軽くなり、
バランスが崩れ、
りんごが板を転がっていくのかどうか・・・

深い意味もなく、そんなことを考えて
楽しく描いてみました。

 

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Vol.38(16年9月)

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第38回は『臨海』(りんかい)
水彩画の作品です。

数年前になりますが、友人に誘われて
大阪湾をヨットで北上したことがありました。

和歌山県の和歌浦を朝、出帆したヨットは
加太と地ノ島の間を抜け
関空橋の下をくぐり
目的地の堺港に到着したのは、日が暮れてからでした。
長い時間の帆走の末に迎えてくれた
堺泉北港のコンビナートの明かりは素敵でした。

その時の工場群の印象と
大阪湾の夕景を思い
水彩画の色の重なりに期待して筆を走らせました。
多くの煙突から立ちのぼる水蒸気の表現に
ひと工夫をしてみました。

 

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Vol.37(16年8月)

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第37回は『睡蓮』(すいれん)
日本画の作品です。

夏、未の刻(午後1時~3時)に咲くから「未草(ひつじぐさ)」
また花が昼に咲き、夜は閉じるから「睡蓮(すいれん)」

スイレン」は、日本では1種類のみが自生し、
世界の野生種は40種くらいあるそうです。

確かに洋風の花の印象があります。
スイレンの絵」と聞いただけで、モネの「睡蓮」の作品を
思い浮かべます。
ジヴェルニーの庭園の池にスイレンを植えて、
多くの作品を残したモネですが、彼は「水の風景」と題しています。
確かに池の水が主題の作品が多いようです。

そんな「スイレン
水辺の花でもあり、蓮に似ていますが、
花びらの鋭いかたちが、
何かを掬い取るような蓮の花びらのかたちと異なり
魅力的です。
スイレンの葉の浮かぶ水面は面白い題材ですが、
花自体の美しさを追いかけてみました。

 

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