Vol.8(14年3月)

f:id:busyoan-uzla:20170124213319j:plain

第8回は『冬堂』(とうどう)
水彩画の作品です。

今年の冬は、特に寒さが厳しく感じられます。
冬のお寺の佇まいを描きたいと思い、
「靈山寺」に出かけたのは、立春の近い寒い日でした。

「登美山鼻高 靈山寺(とみやまびこう りょうせんじ)」
奈良の西、富雄川沿いにあるこのお寺は、
天平8年(736)の落慶とのこと。
小野富人が建てた薬草湯屋が縁起の「薬師湯」が有名ですが、
1200坪に200種、2000株の「ばら庭園」も、
春と秋の開花時には心を和ませてくれます。

作品名のお堂は「開山大師堂」。
国宝の本堂から湯屋川を挟んだ対岸の山の斜面に建つ、
小さなお堂です。
石段を降りた所には澄んだ放生池があり、
4月後半には水芭蕉が咲くそうです。

冬の景色は、深く落ち着いたさまざまな色があり、
寒さに耐えながらも、筆先は楽しく跳ねました。

 

*****

 

Vol.7(14年2月)

f:id:busyoan-uzla:20170124213009j:plain

第7回は『三彩』(さんさい)
水彩画の作品です。

水彩絵の具は私の好きな画材です。
いろいろな表現が、比較的簡単にできるのが魅力でしょうか。

画面に対象だけを強調して描いてみたいと思い、挑戦しました。
描きたかったのは、京焼の「三彩鶴首花瓶」です。
三彩の藍色の美しさを表現したくて、
背景は限りなく黒に近い三色で表現しました。
貫入(かんにゅう)の入ったやわらかい形の陶器には
薔薇の花をそえてみました。

五本の薔薇と花瓶のバランスを整えて、
薔薇の色は三色でまとめるイメージでしたが、
パレットの絵の具の鮮やかな色を眺めていると、
三色が結局五色になり、
作品としてはテーマの花瓶の表現を損ねる結果となりました。
しかし、絵の具それぞれの色の美しさには、
深い陶器の三彩とは異なる魅力がありました。

 

*****

 

Vol.6(14年1月)

f:id:busyoan-uzla:20170124180306j:plain

第6回は『薫華』(かおりばな)
日本画の作品です。

新しく清々しい朝、凛とした空気の中でかすかに薫る
蘭のかおりは良いものです。
「風」は絵になりますが、
「音」や「味」や「かおり」は難しいと思います。
特に「かおり」は対象が放つ薫りを観る人に、
連想させるしかないかもしれません。

絵具の“岩緋”や“牡丹”で花は描きましたが、
かおりを表現するために思考した背景は、
かすかな蘭のかおりの「色」とは、
ほど遠いものになってしまいました。

「かおりをきく」と言うことばがあるように、
「かおりを描く」ことに、今後も挑戦して行きたいと思います。

 

*****

 

Vol.5(13年12月)

f:id:busyoan-uzla:20170124175955j:plain

第5回は『冠雪(かんせつ)』
日本画の作品です。

信州の北端に、神話の昔「天の岩戸」が飛来した姿の
戸隠山」があります。
戸隠山の麓の戸隠神社は「天の岩戸開き」に功績のあった
神々をお祀りしているそうです。
戸隠山を中心に連なる「戸隠連峰」は凝灰質集塊岩が作る
鋭い絶壁となっています。

風のない早朝には、周囲の樹々とこの連峰を鏡のように映す
「鏡池」に行ったのは、黄葉の晩秋です。
前夜からの冷え込みで戸隠連峰はうっすらと雪を被って、
燃え上がる黄葉の後方に荒々しく聳えていました。
冬の訪れを告げる冷たい風が、水面に漣を立てていて、
「鏡」のみなもを観ることはできませんでしたが、
紅、黄、緑に、山の灰紫と白、空の青が色彩のハーモニーを
奏でていて、息をのむ美しさでした。
厳しい季節を迎える前の自然界の色の燃え上がる様子は、
ことばにも、そして絵にも表現できない力強さを感じます。

 

*****

 

Vol.4(13年11月)

f:id:busyoan-uzla:20170124175508j:plain

第4回は『西堂(さいどう)』
水彩画の作品です。

『西堂』。正式には『九体阿弥陀堂
京都と奈良の間、当尾の山間に静かに佇む
『小田原山 浄瑠璃寺』の本堂です。
『九体阿弥陀堂』の名前のとおり
堂内は九体の阿弥陀如来坐像が並んでいます。
平安時代末期に流行った「極楽往生」への願いが
九体の如来を安置する建物を作り、
横に広がった魅力的な御堂となっています。

日頃は静かな山のお寺ですが、紅葉の頃はもみじ狩りを兼ねた
参拝者でにぎわいます。
宝池(ほうち)を中に、東に三重塔、西に本堂を配した
伽藍構成の当初は、本堂の対岸から阿弥陀如来を拝んだそうです。

秋の一日、いにしえの人々の「欣求浄土」信仰に思いをはせ、
宝池の此岸(しがん)から紅葉に彩られた、彼岸の御堂を描きました。

 

*****

 

Vol.3(13年10月)

f:id:busyoan-uzla:20170124175321j:plain

第3回は『黄昏(たそがれ)』
今回は水彩画の作品です。

創作活動をするときに、「最初に題名があることが大切だ」と
聞いたことがあります。
作品で何を表現するかが創作なのでしょうか。

『黄昏』を表現したいと思い、以前にスケッチした道東の湿原を
材料に水彩画を描きました。

雪を間近にした、季節の黄昏
残照の中に景色が溶け込む一日の黄昏
人生の黄昏

湿原の川は、緩やかに悠に流れて行きます。

 

*****

 

Vol.2(13年9月)

f:id:busyoan-uzla:20170124175226j:plain

第2回は『偲華(しのびばな)』
今回も小さな麻紙ボードに日本画の絵の具を使いました。

秋のお彼岸(秋分)のころ、田んぼのあぜ道や土手に、
急に赤く燃え上がるように咲く「彼岸花」は「曼珠沙華」の
別名とも相まって、「彼岸」のことを思い起こします。

昨秋、恩ある方の偲ぶ会の帰り、お世話になった思い出の場所で
ひっそりと咲く黄色い花と出会いました。
彼岸花は赤、または白と思っていたので特別に印象に残り、
絵にしてみました。
ヒガンバナ科にはリコリスネリネなど多くの種類があるようです。
出会った花は「リコリス オーレア(黄色い彼岸花)」。

黄土を混ぜた赤系のバックに、金色を帯びた黄色い華を一輪。

 

*****