Vol.15(14年10月)

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第15回は『滝響』(そうきょう)
水彩画の作品です。

苗名滝(なえなたき)は、長野県と新潟県の境にあり、
「日本の滝百選」に選ばれています。
米どころの高田平野を流れる関川の上流にあるこの滝は
落差55mで、瀑布の轟が地震にたとえられて
地震=なゐ」から「ないの滝」が「なえな滝」になったとか・・・
しぶきを上げ、こだます水音の迫力はまさに『滝の響き』

訪れた日は時雨模様で、滝の上は霞んでいました。
霧雨を集めるように崖を落ちる滝のすがたは、
気の遠くなる時を経て、水が作りだした柱状節理の玄武岩
岩肌と調和して絵心を誘います。

「滝の音」にテーマを絞って、滝と岩壁を単色で描きました。
「音」「時」を表現するには、まだまだ時間が必要です。

 

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Vol.14(14年9月)

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第14回は『茨』(いばら)
日本画の作品です。

「茨の花」は「薔薇」とともに夏の季語です。
「茨」といえば、初夏の白い五弁花の野薔薇を思い浮かべます。
この作品は「薔薇」と題すべきでしょうが、
創作中から「茨の花」や「茨の実」という言葉が浮かんで
『茨』という題名にしてしまいました。

日本画でよく描かれる花は、
「梅」「桜」「杜若」「牡丹」「菊」「椿」などですが、
私にとって「薔薇」は、最も絵心を誘う花です。

紀元前12世紀頃の古代ペルシャ時代には、
すでに栽培されていたそうです。

多くの色・かたち、甘い香り、
花束にしても、また一輪だけで贈っても、
色・かたちと香りが相まって、いろいろなメッセージを伝えてくれます。
そんな「薔薇」の魅力が筆を走らせるのでしょうか。

つぎはきつい“棘”と可憐な“五弁花”の、
野に咲く『茨の花』に挑戦したいと思います。

 

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Vol.13(14年8月)

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第13回は『雨過ぎて』(あめすぎて)
水彩画の作品です。

丹後半島の東端にある伊根町は、湾に面して230軒あまりの
「舟屋」が建ち並ぶ風景で有名です。
舟屋は海際に建てられて、1階は船揚場、物置、作業場など、
2階は生活の場だそうです。
海と山に挟まれて舟屋が並ぶ日本海の漁村を描きに出かけたのは、
晴れた夏の一日でした。
波止にスケッチの場所を決め、イーゼルを立てて
パネルに思い切り水を使って下描きをし、
夏の陽ざしに乾くのを任せ、
昼食を求めて静かな昼下がりの村を歩きました。
やっと見つけた一軒の食堂に入り、海の幸を楽しむ海鮮丼。
その前に午前中から頑張った褒美に、「ビール」と「へしこ」。
一息つき、お腹も満たされて店を出てみると、
まったく気がつかなかった「通り雨」のあと・・・

乾いていたはずのパネルは、下描きの色がきれいに流されていました。
しかし雨のあとを感じさせない静かな海と、
雨の余韻を残す山の雲。
流れた色は、湾の海を描くには丁度良い雰囲気を作っており、
気を取り直しての再挑戦でした。

海の通り雨は一瞬のできごと。
この作品とともに、夏の「丹後の海」の思い出となりました。

 

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Vol.12(14年7月)

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第12回は『映夏』(えいか)
水彩画の作品です。

2013年11月の私にとって4回目となる作品は
「小田原山 浄瑠璃寺」の本堂「九体阿弥陀堂」描いた
『西堂』を紹介しました。
今回の『映夏』も同じ写生地です。

紅葉の「浄瑠璃寺」は素敵ですが、夏の陽ざしの中、深緑につつまれて
ひっそりと池にすがたを映す「阿弥陀堂」も魅力があります。

浄瑠璃寺」がある当尾の里には、美しい三重塔の「岩船寺」もあります。
さらには木津川を挟んで北に、「海住山寺」や「蟹満寺」「神童寺」など、
古くからの伝統を伝える寺院が点在するこのあたりは、
平安時代貴族たちの憧れの地だったそうです。

時代を遡りこの辺りが「瓶原(みかのはら)」、
木津川が「泉河(いづみがわ)」と呼ばれた奈良時代
天平12年(740年)には、聖武天皇平城京から瓶原の地に遷都し、
恭仁京(くにきょう)・恭仁宮(くにのみや)」を開いています。
恭仁京」が都だった期間は3年強・・・
短命の都だっただけに、「幻の都」としてのロマンを感じさせます。

浄瑠璃寺」の創建は永承2年(1047年)ですから、
「幻の都・恭仁京」とは、300年の隔たりがあります。
しかし、木津川と周辺の丘陵の景観が、奈良時代には都を、
そして奈良時代から平安時代には仏教信仰の聖地をつくらせたのでしょう。

スケッチブックを友に、もう少しこの辺りを散策したいと思います。

 

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Vol.11(14年6月)

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第11回は『花菖蒲』(はなしょうぶ)
日本画の作品です。

「あやめ」「杜若」「花菖蒲」「しゃが」「いちはつ」
みんな「アヤメ科」の花たちです。

奈良の「春日大社 神苑 萬葉植物園」には約300種の
萬葉植物が植栽されています。
すべての花菖蒲の原種になる「野花菖蒲」も
植えられているようです。

初夏の花のひとつ、「花菖蒲」を描きに「萬葉植物園」を
訪ねました。
「花・蕾・葉」と、すべてが魅力的なかたちです。
そのスマートな佇まいを、直線を主に描いてみました。

 

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Vol.10(14年5月)

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第10回は『円堂』(えんどう)
水彩画の作品です。

奈良にはいくつかの「円堂」があります。
有名な法隆寺夢殿をはじめ、法隆寺西円堂、
興福寺北円堂、興福寺南円堂、五條・榮山寺円堂。
これらは平面が八角形の「八角円堂」です。
どのお堂も魅力的な形です。

興福寺の北円堂は、承元二年(1208年)頃の再建ながら、
興福寺の現存建物の中で最も古いひとつだそうです。

爽やかな風に誘われてスケッチブックを片手に訪れた時は、
中金堂の再建工事とともに行う、
北円堂の回廊復元の工事パネルに、周囲は覆われていました。
工事のおかげで堂はじっくりと眺められましたが、
「円堂」の絵としては、金属のパネルは不釣り合いなので、
以前に描いたスケッチの木材の囲いを復活させました。

南円堂と三重塔の間の坂道を登ると見えてくる北円堂の姿は、
大好きな景色です。
回廊が出来て壁越しに眺める北円堂も、今から楽しみです。

 

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Vol.9(14年4月)

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第9回は『春色』(はるいろ)
水彩画の作品です。

京都下鴨の京都府立植物園
山城盆地の貴重な自然林が残された「なからぎの森」が、
池に囲まれてあります。
池には水鳥が飛来するので、この日も決定的な写真を撮ろうと
数名の野鳥写真愛好家が詰めていました。

森は落葉樹と常緑樹が混生しており、
春の芽だしの木々の美しさは、
秋の燃え上がる紅葉の色と異なり絵心を誘います。
陽光を浴びて輝くいろいろな木の葉は、花には見られない
『はるいろ』を演出してくれます。

 

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